奈良での個展に向け、残り二週間弱、ラストスパート。
作業の合間を縫って、西岡さんに同行し、
知られざる”より土”屋さんを教えてもらった。
噂には聞いていたが、あばら家としか言いようのない崩れかけの作業場で、
お爺さんが、一人手作業で細々と作るより土。
平成も終わろうとしているこの時代、
にわかには信じ難い”商い”がそこには、現存していた。
それは、昭和30年に刊行された、わたしの大好きな写真集、
岩波写真文庫 「やきものの町-瀬戸-」
(あの東松照明が撮影したと言われている)
で活写された、在りし日の瀬戸の姿を思い起こさせた。
絶滅寸前の”より土”屋は、
消え果てたと思われた昭和の瀬戸の、最後の灯火と言えるのかもしれない。
果たして次に来た時に、残っていてくれるだろうか?
そんなことを考えながら、
使いやすそうなより土を、ふた袋ばかり頂いてきた。